オリオンの騎士
第2話 始まり
第2話 始まり
息を切らしながら
ルナは桟橋を渡り
王国へ戻る。
「はぁっ…はぁ…」
ふぅーと深呼吸しながら
自分の家へと戻る。
《なんだったんだろうあの人…
あんな怪我して、なんであそこに
いるんだろう》
ルナはそんなことを考えながら
ふらふらと歩いていた、
とその時だった。
前から王宮の馬車が
くるのが見えた。
ルナは頭を下げ、
道の端へと自分の身をよけた。
馬車が通る瞬間、
ルナは少しだけ目を上げた。
次の瞬間
馬車に乗っていた青年と
目が合うと、ルナは
何かを感じとった。
黒い闇と、怖れ…
ルナの額には
冷や汗が流れる。
《今のは…なに?》
馬車はとまることなく、
王宮へと一直線に
中心街をかけていった。
「おかえり、ルナ」
フィオラがルナが
家の戸を開けたのを見ていった。
ルナは少しだけ疲れたような顔をして
「ただいま兄さん」
と言いながら自分の部屋へと向かう。
「ルナ、雨に降られなくてよかったね。
タオル必要なかったかな。」
フィオラは優しく声をかける。
「そうだね。あっ、タオル…
………あれ?」
おかしい、わら籠に入っていた
はずのあの白いタオルがない。
「まさか、あの時に落として…」
海岸で少年の腕を触った時の
ことを思い出す。
「ごめん兄さん!明日探して
くるから。」
ルナはそう言いながら
自分の部屋に入る。
「え、探してこなくていいのに…」
「僕にはルナがいれば、
なんにもいらないんだよ…。」
フィオラはそう呟きながら
自分の腕の中に顔をうずめた。
ルナは部屋に戻り、
ふかふかの布団へと倒れた。
「今日は変な日だ…」
海岸の少年。
馬車の青年。
明日は海岸へ
行かなければいけない。
あの少年がいないことを
願いながら
静かに眠りについた。
ルナはこれが
自分の家で過ごせる
最後の1日だとは、
その時はまったく
知るはずもなかった。