オリオンの騎士

第4話 魔法使い







スタージが淡々と語る。










《なにいってるのこのひと。》






ルナにはスタージの
言っていることが全く
理解できていなかった。




《この国が消えるってなに?
まず、魔法使い?え?》





そんなルナを見透かしたように

スタージは
「やっぱ信じらんねーよな」
という。






「何の話ですか?
私のことばかにしてるんですか?」





ルナはだんだん不機嫌になる。





でもスタージは
顔色一つ変えないでいう。





「この国には魔法使いがいるんだよ。
まあ、信じるか信じないかは別として」





「俺の左手、見ててみ」




そう言うとスタージは自分の左手を
ルナの顔の前に出す。






ルナは、

動くことが出来ない。




体がピクリとも動かない。



声も出ない。






《な、なに…これ…》




スタージが左手を降ろす。




と、同時にルナの身体が
ふわっと少し後ろの方へ下がった。




「俺は人や物体の動きを止める
瞬間魔法ってやつを使うことが出来る」




「他にも記憶魔法、変換魔法
表現魔法とかいろいろあるんだけど」




「まーそりゃお前にはぜーんぜん
関係のないことだし、信じなくていいよ!」





ルナは身体が動かなかった。




信じなくてよいと言われても
信じざるを得なかった。







それは、かけられた自分が
一番よくわかったことだった。








この人は、魔法使いなんだ。






「…信じます…。」






ルナがそう言うと
スタージはまた少しにやっとして



「じゃあ、俺に協力してな?」






という。






ルナには悪魔の笑いのように見えた。





協力しなかったら、殺される…。







そんなことも少し思ったけども



ルナにはもう一つの感情もあった。




《この人は、大丈夫なのかもしれない》




彼の雰囲気は何処か
暖かいように感じた。






フィオラと似ているようで、
似つかないような。





そんなことを考えながら
スタージの話は続く。





「まー魔法使いっつても
俺みたいないい魔法使いもいれば
悪い魔法使いもいるわけなんだよ」




「この世界の、“オリオンの騎士”の
神話を知ってるか?」




オリオンの騎士ーーー






この世界では、どこの王国でも
いたって有名な神話である。








その昔、オリオン王国という
大都市がこの世界には存在しており






オリオン王国はほかの王国よりも
文明も技術も発達し、
魔法使いも数多く存在していた。



生まれつきの魔法使いもいれば

技術によって魔法使いに
なった者もいた。







生まれつき純血の魔法使いは、
技術によって進化し魔法使いとなった
人間を“偽りの魔法使い(ブラフマン)”
と呼び忌み嫌った。




またブラフマン達も
自分達をけなし嫌う純血の魔法使いを
嫌っており




純血の魔法使いを
自分達に取り込もうとして






オリオン王国で大反乱を起こす。
これがのちのオリオン大戦と
呼ばれる大戦争である。








これにより、純血の魔法使い達の
筆頭として戦ったのが
当時のオリオン王国の王女であった
マリカ•オリオンと


王女を守るため
11人の純血の魔法使いで構成された
通称“オリオンの騎士”と呼ばれる
者たちである。








マリカ•オリオンと
このオリオンの騎士の
おかげで
ブラフマン達をオリオン王国から追い出し、




オリオン王国は平和を
勝ち取った。





しかし





追い出されたブラフマン達は
オリオン王国への復讐のため


ほかの王国の人間に
ブラフマンの種“ブラフマー(悪魔)”を
植え付け





同胞を増やし
マリカ•オリオンとオリオンの騎士が
死んだ後、オリオン王国を滅ぼした。






という物語である。






「まあ、つまり
このブラフマンってのの子孫が
今俺が言った悪い魔法使いってことで」






「俺の国を消したのはそいつらで
今そいつらはこの国を滅ぼそうとしてるかもしれないってことなんだよ。
ざっくりいうと。」







ルナからは言葉が出ない。






「…」




少し深呼吸してから




「それが、本当だったら
私は、どうなるの…?」






スタージは目をゆっくり閉じて
ぐっと目を開けると


「俺が助けるよ。お前もこの国も」





そう言った。







ルナは





スタージを真っ直ぐ見つめた。
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