情熱効果あり

平凡な日常

朝、８時30分。私の職場である緑町薬局のドアを開ける。


「おはようございます！」


「おはよ…」


張り切って、元気良く挨拶をしたというのに、低い声で返されるとせっかくの気分が下降していく。

低い声で返事をした男…夏川哲志（なつかわさとし）、私より３つ年上の32才。

静かに仕事をこなし、存在感の薄い…一応先輩である。


あまり関わりたくない人だけど、大学の先輩で、しかも同じサークルだったから、OB会でも顔を合わせることがある。


私、高見麻衣（たかみまい）はこの先輩が苦手だ。

絡んでくることはないので、害はないのだけど、２人だけでいると重い空気になるのが、耐えられない。こういう重い空気も苦手だ。


誰か出勤して来ないかな。


「おっはようございまーす！」


やっと来た待ち人はうるさい後輩。この男には、少し大人の落ち着きを持って欲しいと常々思っている。