情熱効果あり
「洗い終わったので、帰りますね。ごちそうさまでした」


明日が休みでも遅くまで長居するつもりはない。

ソファーに座っていた哲志先輩がこっちに首を動かした。


「もう少し一緒にいたいから、今日は泊まっていって」


「ええ?いや、泊まるのはちょっと…」


「この前だって、一緒の部屋で寝ただろ?それと変わらないし」


「いえいえ、変わります」


お姉ちゃんちに泊まるのと、哲志先輩の家に泊まるのでは、意味が全然違う。

それに気軽にお泊まりする間柄ではないはずだ。


「麻衣…」


「え…」


ソファーから立ち上がって、私の前に来た哲志先輩は両手を握る。

距離が近い。


「もう遅い。俺は送らない。外は暗くて危ないから、泊まって行けよ」


無理矢理な誘い文句だ。


「何もしないなら」


「それは、約束は出来ないな」

< 172 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop