情熱効果あり
焦っているようにも見えない。極めて冷静に見える。


「麻衣さ、本気だと思ってないだろ?嘘だ、嘘だと言ってるしな」


「そんなことないんですけど、何だか信じられないというか…」


「どうして?」


「あの、情熱が足りないんです」


熱い想いを感じないのである。


「情熱か…」


哲志先輩は熱い男ではない。熱くなっている姿なんて一度も見たことがない。

でも、他の先輩と馬鹿みたいに盛り上がっているのを見たことがある。珍しい光景だと思ったものだ。


グイッ!


「え…。ん!…」


私の髪を触っていた手は、突然後頭部に行き、引き寄せた。

抵抗する間もなく引き寄せられ、唇が重なった。


離れない。離れられない。突然のことに目は見開いてしまう。


後頭部をガシッと押さえられ、前からはブチュッと唇を押し付けられていて、自由に動けない。
< 178 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop