情熱効果あり

「麻衣ちゃんは理想を求めすぎなんだよ。いろんな人と付き合って、理想に合う人を探すのも良いけど、時には妥協も必要だよ。何もかもぴったりな人なんて、そういないもんだからね」


そんなに高い理想を持っているつもりはない。でも、人から指摘をされるくらいなんだから、高いのかな？


「んー！美味しい！」


あれこれ深く考えても仕方がない。

目の前にあるビーフシチューを堪能する事が今は大事だ。


「麻衣ちゃんは、いつもとても美味しそうに食べてくれるから、見ていて嬉しくなるよ」


「美味しいですね…」


「哲志くんにまで言ってもらえると照れるなー。また頑張って作るよ」


突然、哲志先輩の声が聞こえて、そっちを見た。

本当に存在感が薄いというか、静かだから、いたことを忘れていた。


一言発しただけで、黙々と食べている姿に話し掛けていいかどうか迷う。