情熱効果あり
栄養分
いざとなって、逃げられたら困るからと手をギュッと握られたままでエレベーターにも乗り、取ってくれた部屋まで来た。


ガチャ


部屋のドアが開いて、やっと手が離れた。もう逃げることなんてしない。

でも

覚悟は出来ていると思っても、なかなか一歩が踏み出せないものだ。客室に入って、どこにいたらいいのか迷ってしまう。


「麻衣。おいで」


優しく呼ぶ声に安堵して、ふらふらーと足を進ませる。ゆっくりと部屋を見回した。

シンプルな内装のツインルームだ。ベッドカバーと少し小さめのソファーは紺色で、壁やカーテンはクリーム色。


ベッドが2つあることに内心ホッとする。


「座ったら?」


「はい」


四角いテーブルに椅子が2脚。

哲志先輩の向かいに座る。


「さっきの話の続きなんだけど」


さっきの話…何の話だったか咄嗟に思い出せなくて、首を傾げる。

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