情熱効果あり
「麻衣?どうした?何で泣きそうな顔してる?」


「泣きそう?いいえ、泣かないです。泣く意味もないですし。ただ…」


「ただ?」


「ちょっと悔しくなって」


そう、私の知らない哲志先輩がいることに悔しい。


「何が悔しい?何で?」


「私ももっと哲志先輩を知りたい。知らないことがあるなんて、嫌です」


「フッ。やっと俺に興味を持った?」


左側の口角を少し上げた哲志先輩は嬉しそうだ。


「美咲先輩の方が知っているなんて、悔しいです」


私は意外に負けず嫌いなのだ。


「大丈夫。美咲の知らない俺も見せてあげるから。しっかり俺を見て。それで、感じて」


「え?あの…」


「俺の知らない麻衣も見せて」


そばに来た哲志先輩が私を立ち上がらせた。そして、今…哲志先輩の胸の中だ。


哲志先輩の心臓の音が伝わってくる。体温も伝わってくる。  
< 214 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop