情熱効果あり
素早く抱き締めて、1人で満足した哲志先輩は涼しい顔で出て行った。

残された私は真っ赤な顔をして、その場で数分固まっていた。


午後の業務も午前と変わらず忙しい。みんな出来るだけ早く動くようにしているのだけど、次々にお客さんがやってくるから、段々疲労が増していって、動きがゆっくりになってきた。

早く進めるよりも正確に進めることの方が重要だからだ。

いつもは補佐程度にしか調剤業務をしない局長も受付から会計まで、私たちと同じように業務に加わっていた。


それでも忙しくて、待合室の椅子は足りなくなり、立って待つお客さんも一時期あったくらいだ。


「ありがとうございました」


最後のお客さんを見送ったのは、営業時間を40分過ぎたところだった。誰一人文句を言わないで、黙々と調剤をしていた。


「夏川くん、健くん、よろしくね。お先に」


「お疲れ様でした」
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