情熱効果あり
「あ、ごめんなさい…」


調合する薬品を取ろうと手を伸ばしたら、哲志先輩の肩にぶつかった。


「いや…」


相変わらず素っ気ない。だから、気にとめることもなく、作業を進める。


お昼近くになると患者さんが減ってくる。

小児科は12時から3時まで休診になるけど、うちの薬局はずっと開けている。どこの病院の処方箋でも受け付けるからである。

昼休みは一時間半を交替で取るようになっている。


「今日は、前半が健くん、薫さん、私ね」


局長の確認と同時に3人が昼休みに入った。


「こんにちはー」


「まいちゃーん!」


お客さんのいなくなって、静かになった薬局に私を呼ぶかわいい声が響いた。


パソコンに記録を入力していた私は、立ち上がって、窓口に行く。


「蓮(れん)、蘭(らん)!どうしたの?」


「お薬もらいにきたよ」


双子の蓮と蘭はお姉ちゃんの子どもで、6歳になる。

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