HAIJI
出ていく背中にすがるように、視線で追いかける。
けれど、そのまま消えていった。
「……っ、」
わかっていた。
ここで自分で立ち上がらなければ、俺は間違いなく、もう自分の意思で立ち上がることはできなくなるだろう。
そして、俺は──
──生きるか、死ぬかだ──
ヤマトの声が、真実味を帯びてくる。
ナナタの苦しそうな声は部屋の外まで聞こえていた。
うなされたような声。
布を潜ると、その中に「痛い、痛い」という呟きが混じっているのがわかった。
足が震える。
息が詰まる。
「とりあえず固定はしたけど、痛みで意識が朦朧としてる。眠ってしまえば少しは楽なんだろうが、痛み止めも睡眠薬もあんまり効いてないみたいだ」
視線はナナタから離さずに、イチイは冷静な声で言った。
ロウソクの灯りに照らされたナナタの顔を見る。
顔色が悪い。
額には濡れた布切れが置かれている。
熱があるのかもしれない。
痛みを食い縛るように唸り、その度に閉じた目からは涙が溢れた。
痛々しい。
「……ナナタ、」
俺はナナタの側に静かに膝を付いた。
毛布を握る小さな手に触れる。