HAIJI
決意
七汰を外から連れ戻してから一週間が経った。
心配していた骨折以外の病気に発展するような症状は今のところないようで、痛みもだいぶ和らぎ、意識をはっきりしてきていた。
骨が着くまでは絶対安静だが、食欲もあるし、とりあえずは安心して大丈夫とのことだった。
七汰が歩けるようになる頃、きっとこの場所にも雪が降り始める頃だろう。
「一偉、教えてほしいことがあるんだけど」
俺は改めて一偉と話がしたくて、一偉の部屋のドアを叩いた。
始めて入る一偉の部屋は、他の部屋とは雰囲気が違っていた。
内装はしっかりしていて机、本棚がある。
さすがにパソコンまではないにしても、書類、本、新聞などが、ある程度まとまって並べてある。
「スラムにこういう場所があるのが珍しい?」
部屋の中をキョロキョロと見回す俺に、一偉は笑って言った。
「ああ。意外だな」
「スラムっていうのは通称で、正式名称は育児放棄児童国家保護区域。色々と書類なんかも必要らしいね。まぁ、保護区域じゃない自然発生のスラムは勿論余計な書類なんか必要ないけど。一応、ハイジの人数とか、死因とか統計とかも出さなきゃいけないんだって。
あとは、まぁ、色々。多少社会情勢なんかも知っとかなきゃいけないものもあるしね」
本当に意外過ぎる理由で驚いた。
国が保護をしているという事実に。
「って、ハイジが自分でやるのか?」
「さぁ。わかんないけど。まぁ、執行員も寄り付かないからね。適当でもバレないし、間違ってたところで誰の損得にも関わらないよ」