HAIJI
な、宵は一偉の方へ視線を向ける。
「なんのために?」
一偉は冷静に俺の目を探った。
「なんのため…と言われれば、なんのためでもないな。
七汰の看病をしていて、色々と考えたんだ。今の俺にできることはなんなのか」
一偉は視線で俺の話の先を促す。
「とりあえず、現実を知らなければ何もできないって思ったんだ」
「現実?」
「ああ。一偉や宵から話を聞いても、もともとのやり方をなぞるだけだ。
その中でも、少し俺なりの疑問がある」
「なんだよ、疑問って」
「俺はハイジの可能性がまだあると思ってる。俺が外に出たら一発で殺されると思うのは宵の経験だ。でも俺は俺なりのやり方で生きて帰ってくる自信がある」
「……。」
「……。」
「甘いって思うだろうけど、温室育ちの坊っちゃんだからできることがある。……まぁ、俺だって鉄パイプを食らいに行きたいわけじゃない。七汰を悲しませたくないし、皆の心配を無駄にはしない」
顎を引いて、一偉の目を見返す。
信じて欲しくて。
「外のハイジへの心理は俺の方が理解してる」
「……。」
一偉の目に俺が映る。
こうやった対峙すると、一偉の方が明らかに上手だと感じる。
嘘を付くことも誤魔化すこともできないだろう。
正直に。
「ハイジになった日が浅いうちに行きたいんだ」