HAIJI

「どういうことだ?」
「借金すれば誰でも上之区に住めるってことだよ。でもそれは外から見てもわからない。ほとんどは外見で金持ちそうだとか貧乏そうだとか型にはめる」
「つまり、それらしく振る舞ってればハイジだとバレないってことか」


 答えたのは一偉だった。


「まぁ、単純に言うとそういうこと」
「ってことは、佐々来の考えっていうのは……街中を堂々と歩く」
「そうなるな」


 俺の考えを理解した宵は、一度視線を落としてからドカっと椅子に腰を下ろした。


「バレたら終わりだろ。リスクが高すぎる」
「そう思うか?」
「ああ」
「宵。外の人間がハイジを見つけた場合、どれくらいのやつが殴りかかってくると思う?」
「は?知らねぇよ。俺たちを人間だとも思ってない連中だ。少なく見積もっても8割はいくんじゃねーの」


 宵の自嘲染みた言葉は予想通り。
 俺は唇を緩めた。


「そう思うだろ。でも実はそれほどでもない。社会の形として、殆どは傍観者だからだ。傍観者っていうのは、基本的に第三者的立場で加害者を非難したり事件を検証したりする。そういうやつらは絶対自分で手を出したりしない。あくまでも第三者でいないといけないからだ。
勿論差別的な考えのやつはゴマンといるけど、基本的にはハイジとわざわざ関わりたくないってやつの方が絶対的に多い」
「あ?」



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