HAIJI

「ただ、宵が言った通り、見つかれば言葉通り袋の鼠」


 注意に念を押す一偉。


「佐々来は今ならギャップは小さいって思ってるだろうけど、ハイジであることを受け入れた段階から、思ってる以上に価値観が変わったと思った方がいい」
「肝に命じとく」
「……佐々来」


 いつも物腰が柔らかい一偉の声が低く響く。
 

「外に溶け込むつもりなら絶対にブレるな。何があっても、何を言われても、本心がどうであれ、外の人間になりきれ」


 顎を引き、有無を言わせない鋭い視線に、俺は頷くように唾を飲み込む。

 きっと俺はまだまだ甘い。

 だけど、一人で外を歩くことを許してくれたことは素直に嬉しかった。


 絶対に死なない。

 ハイジの未来のために。

 誰が言わなくても、自分が希望であることを、自分が認めよう。

 自惚れだって言われても、俺だからできることがある。

 一偉にも宵にもできない。


 俺はハイジだ。

 ハイジであり、佐々来だ。

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