HAIJI
ピアスホール
その日は朝から雪が降っていた。
ハイジは年齢関係なく、全員で雪掻きをする。
皆真面目だな、と関心する。
まだリハビリ中の七汰でさえ、自分より小さい子どもに指示を出しながら自分にできる範囲のことをやっている。
大和がスラムにやって来たのは、その時だった。
「なんか逞しくなってるなぁ」
大和は俺の顔を見るなり、嬉しそうな顔で雪を掻いて近寄ってきた。
持っている大きな麻袋を片手に抱え直し、俺の背中をバシンと叩く。
「その節はどうも」
大和に会ったのは3ヶ月振り。
自分で自覚するほど俺は変わった。
価値観は全て逆転したのだ。
大和に会うことで、3ヶ月前の自分を思い出して気恥ずかしさが込み上げてくる。
穴があったら入りたいくらいだ。
でも、ここでからかうような人間は誰ひとりいない。
過去も、全部含めて俺だと認めてくれる。
気恥ずかしさは、結局俺に擽ったさだけを残して、風に溶けて消えて行った。
「アンタに折り入って話があるんだ」
「うん」
スコップを雪に突き立て改めて大和に向き直ると、大和は頷くように了解してくれた。
「でもその前に、アンタも雪掻き手伝って」
突き立てたスコップを指して、問答無用で指示を送った。