HAIJI

「ふっ、はははは!」


 変なことでも言っただろうか。
 眉間を寄せる。


「無理なら別に……」
「いや、ゴメン。そうじゃなくて……」


 ちょっと待って、とジェスチャーで示して、必死で笑いを止めるように努める。


「はは、いや、『ウチ』って……」
「?」


 深呼吸するように笑いを落ち着けて、ひたり、と俺を真っ直ぐに見つめる。


「心配してた。……本当にハイジになったんだな、ちゃんと」
「……、」
「でも、たった3ヶ月で思った以上に成長してて驚いた」


 そして大和は本当に嬉しそうに笑ったから、俺は、また胸の辺りが擽ったくなったのだった。


「そ、それで、」


 顔が熱くなって、慌てて話を進める。


「そういうの、できるのか?」
「まぁ、なんとかするよ」
「本当は全部自立できればいいんだけど、外に出るために準備も必要なんだ。外にさえ出られれば、策はいくらでもある」
「頼もしいな」
「本当にね」


 カード番号を伝え俺が大和と握手を交わした時、外から一偉を呼ぶ声がした。
 一偉が部屋から出ていくのを見送る。


「大和、」
「うん?」
「……、」


 大和と二人きりになって、俺は他にも大和に聞きたいことがあった。
 なんと言うべきか、悩む。


「……アンタ、ハイジじゃないんだろ?」


 笑顔が嘘だとは思わない。
 あの一偉が信用しているのだから、多分、悪い人間ではないとは思う。

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