HAIJI

「……なんで、こんなことをしてるんだ?」


 大和の表情が、変わる。
 地雷だっただろうか。


「なんでって?」
「ただのボランティアなわけではないだろ。財源だって相当必要なはずだ」
「確かに、ただのじゃないな」
「ピアスホール」


 大和の眉がピクリと動く。
 視線が鋭くなった。


「ピアスは何色だ?」
「……、」


 大和の左耳に並んだ二つの穴。
 髪で見えづらくなっているが、確かにある。

 耳朶に横に並んだピアスホールは、公務執行員、及び公務執行役員の象徴である。
 元々は奴隷に仕込んだ電磁波入りのピアスに由来し、日本国を民主化に導いた初代大統領、伊東正睦が国民の奴隷になろうという意味を込めて、公務に従事する全ての人間にピアスの装着を義務付けた。
 執行員は黄色、執行役員は青、執行代表は赤を基調とした石が付いていて、中央に近付く程色は濃くなっていく。
 

「……俺がここに来たときもピアスを外してた。それは何か意味があるのか?」


 育児放棄保護児童法が成立して、ハイジは国の保護下に置かれた。
 つまり、国は法律のもとハイジの生活の最低条件を保証しなくてはいけない。
 ハイジに流れて来るはずの税金があるはずで、調べてみたら、保護区域の他に一人頭年間12万円と病院の無償化の権利があるようだ。
 しかしスラムと外の確執を考えたとき、形骸化していることは否めないだろう。

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