HAIJI
「……は?」
俺の思考は一気に転換された。
「妊娠?幸埜が?誰の?」
大和が一偉に問い掛ける。
「……、」
一偉の視線は、ひたりと俺を睨み付けていた。
「……え、」
大和は俺と一偉を交互に見る。
「……えー……??」
俺は違う理由で、むしろさっきよりもびっしょりと汗が吹き出していた。
「えーと、マジで……?」
今度は俺に問い掛ける大和。
「……心当たりは?」
いつも冷静な一偉が、責めるように俺を睨む。
「…………一回…………だけ…………」
なんでか知っている一偉に、俺は筋肉が緊張した喉から事実のみを絞り出した。
頭が真っ白で言い訳すらできずに。
「佐々来。お前、案外順応性高いのな……」
フォローにもならない大和の呟きは俺の耳には届かず、一偉の突き刺さる視線に、ただただ固まっているしかなかったのだった。
スラムに来て3ヶ月。
目まぐるしく起こる全ての体験は、あまりにも衝撃的過ぎるものばかりだ。
けれども俺は、明らかに生きていることを感じていた。
外よりもずっと。