地の棺(完)
「蜜花ちゃん、行かないほうがいい」
快さんが青ざめた顔でわたしの前に立ちふさがる。
「誰が……」
つぶやくように言ったわたしの言葉に、
「……千代子さんです」
俯いたままの雪君が、小さな声で教えてくれた。
……千代子さん。
雪君の言葉を聞いた神原さんは、青白い顔で口元を抑え、シゲさんは眉間に深い皺を刻み、こちらを見ようともしない。
その様子を見ただけで、中に入るのが怖かった。
ふと、快さんの肩の向こう側で、誰かが動いていることに気付く。
千代子さんの状況を知らないわたしは、彼女が生きているのではないかと思った。
だから、快さんの制止を振り切り、部屋の中に飛び込んだのだが……
そこで目にしたのは、ダイニングテーブルで眠る体を真っ二つに切断された千代子さんと、それを笑顔で見つめる亘一さんの姿だった。
千代子さんの顔は上を向き、両手は胸の上で組まれていた。
黒いワンピースを着た千代子さんの腹部には数十本の赤い薔薇の花が詰められ、
テーブルと床には赤黒い血が広がり、生臭い腐敗臭と、むせるような薔薇の香り、そして鉄臭い血の匂いがあたりに漂っている。
亘一さんはケラケラと笑いながら、薔薇の中心に手を突っ込んだ。
それを見た瞬間、体の奥から苦いものがこみあげてきて、床に突っ伏する。
快さんが青ざめた顔でわたしの前に立ちふさがる。
「誰が……」
つぶやくように言ったわたしの言葉に、
「……千代子さんです」
俯いたままの雪君が、小さな声で教えてくれた。
……千代子さん。
雪君の言葉を聞いた神原さんは、青白い顔で口元を抑え、シゲさんは眉間に深い皺を刻み、こちらを見ようともしない。
その様子を見ただけで、中に入るのが怖かった。
ふと、快さんの肩の向こう側で、誰かが動いていることに気付く。
千代子さんの状況を知らないわたしは、彼女が生きているのではないかと思った。
だから、快さんの制止を振り切り、部屋の中に飛び込んだのだが……
そこで目にしたのは、ダイニングテーブルで眠る体を真っ二つに切断された千代子さんと、それを笑顔で見つめる亘一さんの姿だった。
千代子さんの顔は上を向き、両手は胸の上で組まれていた。
黒いワンピースを着た千代子さんの腹部には数十本の赤い薔薇の花が詰められ、
テーブルと床には赤黒い血が広がり、生臭い腐敗臭と、むせるような薔薇の香り、そして鉄臭い血の匂いがあたりに漂っている。
亘一さんはケラケラと笑いながら、薔薇の中心に手を突っ込んだ。
それを見た瞬間、体の奥から苦いものがこみあげてきて、床に突っ伏する。