地の棺(完)
「えっと……初は、俺達と一緒で。
初、椿は?」


椿さんの名前を聞いた初ちゃんは、興味なさそうに肩をすくめた。


「さあね。来ないんじゃない」


「そう言わず、一応声を掛けに行ってよ」


「やだよ。僕殺されたくないもの」


あっけらかんとした口調の初ちゃんに、快さんは大きなため息をつく。


「あの、わたし……行きます」


気が付けば、勝手に声が出ていた。

多恵さんがぎょっとしたような表情で、


「やめなよ」


と小声で話しかけてきたが、


「大丈夫です」


と返す。


「蜜花ちゃん……いいの?」


「はい。お部屋を教えていただければ、椿さんを迎えに行きます」


椿さん。

姉と同じ時期にここで暮らし始めた人。

彼女には色々と聞きたいことがあった。

でもこの家で暮らしてるはずなのに、志摩家の人々とは別行動をしている椿さんに会う機会がなくて。


「あの……亘一さんはどうされるんですか?」


聞いていいものか迷いつつ尋ねた。

快さんの顔が強張る。

不安そうにしている神原さんや多恵さんを見て、渋りながら口を開いた。


「いないものと。そう考えてほしい」


「そんな……」


多恵さんの声を非難ととったのか、シゲさんがくって掛かる。


「おいっ、あんた中の様子見てもそんなこといえんのか?」


「い、いえ、そんな私は……」


多恵さんは初ちゃんの後ろに隠れた。

それを許さないとばかりに追いかけ、シゲさんが多恵さんの手を引く。


「あいつ、中で死体を犯してんだよ。
完璧いかれてる。
それでも反対すんのか? あぁ?」
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