地の棺(完)
「ひぃっ」
多恵さんはガタガタと震え、小さな悲鳴を漏らした。
死体を犯す……
その言葉が意味する禍々しさに、怖いとか、気持ち悪いとか、そういった感情を上回る嫌悪が身を包んだ。
信じたくない。
でもそれが事実だということは、怒りで赤く染まったシゲさんの瞳から嫌でも伝わる。
シゲさんは、怯える多恵さんの手をきつく握りしめたまま、食事部屋の扉を指さす。
恐らくその向こう側にいる亘一さんのことを。
「あいつは人間じゃねぇ。
それでもあんたは一緒にいられんのか?」
そういうと、鋭い目で多恵さんを見据えた。
多恵さんは声もなく首を左右に振り、そのまま床に座り込む。
「シゲちゃん、もういいだろ?」
快さんの制止に、シゲさんはハッと我に返り、泣きじゃくる多恵さんの手を離した。
多恵さんは床に泣き崩れ、それを神原さんが支える。
「ここは外から鍵をかける。
厨房と繋がってるから、締め切ったからって簡単には死なないだろう。
天候の回復を見ながら、なんとか一週間以内に外と連絡をとれるようにしたいと思う。
それまで常に誰かと共に行動すること。
叔父が犯人と決まったわけじゃないから、次の犠牲者をださないように気をつけるにこしたことはないと思うんだ」
快さんは淡々とした口調で言った。
そこに以前の陽気さはない。
恐らく皆が現実として『殺人』を受け止め始めたのだと思う。
多恵さんはガタガタと震え、小さな悲鳴を漏らした。
死体を犯す……
その言葉が意味する禍々しさに、怖いとか、気持ち悪いとか、そういった感情を上回る嫌悪が身を包んだ。
信じたくない。
でもそれが事実だということは、怒りで赤く染まったシゲさんの瞳から嫌でも伝わる。
シゲさんは、怯える多恵さんの手をきつく握りしめたまま、食事部屋の扉を指さす。
恐らくその向こう側にいる亘一さんのことを。
「あいつは人間じゃねぇ。
それでもあんたは一緒にいられんのか?」
そういうと、鋭い目で多恵さんを見据えた。
多恵さんは声もなく首を左右に振り、そのまま床に座り込む。
「シゲちゃん、もういいだろ?」
快さんの制止に、シゲさんはハッと我に返り、泣きじゃくる多恵さんの手を離した。
多恵さんは床に泣き崩れ、それを神原さんが支える。
「ここは外から鍵をかける。
厨房と繋がってるから、締め切ったからって簡単には死なないだろう。
天候の回復を見ながら、なんとか一週間以内に外と連絡をとれるようにしたいと思う。
それまで常に誰かと共に行動すること。
叔父が犯人と決まったわけじゃないから、次の犠牲者をださないように気をつけるにこしたことはないと思うんだ」
快さんは淡々とした口調で言った。
そこに以前の陽気さはない。
恐らく皆が現実として『殺人』を受け止め始めたのだと思う。