地の棺(完)
なによりその異彩な外観が、強い関心を持たせた。


牛乳パックを三本並べたような、ギザギザの黒い屋根。

窓のある位置からするに二階建てみたいだけど、高さ自体は三階分はありそうだ。

一階と二階のつなぎ目部分には、植物の飾り彫りが施されたタイルが埋め込まれていて、とてもおしゃれだし、小さなホテルみたい。

建物の中央でひときわ目をひく木製の扉は、細やかな網目の細工彫りがされていて、一般家庭で使うものとはあきらかに違った。

そう。
家には見えない。

生活感がないというか。

全ての窓は木でできた格子がついているのも、威圧感があるし。

特に一際目を引いたのが、玄関の上にある、二階の大きな窓の存在だ。

バルコニーに設けられるような大きな窓が二枚、異様な存在感を放っている。

この窓にはなぜか格子はされていない。

足場もないし、あの窓を開けると、一歩間違えば落ちてしまうんじゃないだろうか?


「立派でしょう?」


いつの間にか多恵さんが横に並び、嬉しそうに聞いてきた。


「あ……はい。すごく、綺麗です」


威圧感を感じたなんて、口が裂けても言えない雰囲気である。


「家政婦として面接を受けに来た時、思わず見とれちゃったのよねぇ」


確かに形は変わっているけど、建物はとても立派だ。

幼いころに家族で行った、外国の街を再現したテーマーパークを思い出す。

うっとりとした表情の多恵さんの見た雪君が、苦笑する。


「多恵さん、夕食の用意、間に合いますか?」

途端、多恵さんははっと気を取り直し、慌てだす。


「あらやだ。もうこんな時間だわ。

ごめんなさい、蜜花さん。

本当ならお部屋に案内したいんだけど、私、夕食の準備に取り掛からないと……」


「あ、はい、大丈夫です。
お部屋を教えていただければ自分で……」


「僕が案内します。
多恵さん、蜜花さんのお部屋は四号室でいいんですか?」


多恵さんは大きく頷き、答える時間も惜しいとばかりに、屋敷へと駆けていった。

その変わりように、雪君と顔を見合わせて笑う。
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