地の棺(完)
おもちゃとはいえ、飛行機を見るのは嫌。

顔を背けていたわたしに気付き、初ちゃんは大きなため息をついた。


「悪いけど、見て」


不機嫌全開な口調でそういうと、わたしの顔を両手で掴み、無理矢理部屋の方に向ける。

嫌々ながら顔を上げると、飛行機の翼部分に、銀色のなにかがついているのが見えた。


「……鍵?」


自分の胸元で揺れている小さな鍵。

それととても似ているような気がする


確かめようと、わたしは部屋の中に足を踏み入れた。


「あ、おい。迂闊に近寄るなって……」


初ちゃんがわたしを止めようとした、その時。


足の裏の感覚が消失した。

踏んだ畳が折れ、その下にあった大きな穴に体が落ちていく。


えっ? っと驚く間もないほど突然のことで、避けられない。


「蜜花っ」


初ちゃんが手を伸ばし、その手を掴もうとして、勢いよく引っ張ってしまった。


「ちょっ」


初ちゃんはバランスを崩し、一緒に落ちる。





そして……


わたし達は穴の中に落ちた。
< 123 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop