地の棺(完)
落下している間の事は、なぜかよく覚えている。


数秒が何十分にも感じるくらい長く感じた。


何故こんな穴が?

とか、

あの飛行機は?

とか。

沢山の疑問が浮かび、消える。

衝突による衝撃に体を固くしてそなえつつ、わたしは自分が落ちた穴を見上げていた。

するとそこから、こちらを見ている誰かに気付く。


あれは……





!!!



息が止まるかと思った。


体がバラバラになってしまったんじゃないかってくらい、全身が痛い。


特に足。


焼けるような痛みがあるだけで、その感覚はなかった。


「く……かはっ」


胸の圧迫感が薄れ、小さく咳込んだ。

目を開けるが、真っ暗で何も見えない。

自分が上を向いているのか、下を向いているのかさえも分からず、震える手で周囲を探った。

指先に触れる湿った土。

そして石? のようなもの。

土やカビの匂いに混じる、かすかな香の香り。


ゆっくりと上体を起こし、顔を上に向けた。

穴の入り口は見えない。


塞がれたんだろうか?


落ちる直前、誰かがいたような気がする。


その人がこんなことを?


頭が動き始めると同時に、体の痺れや痛みが治まってきた。


なんとか立ち上がろうと足に力をいれた時、


「痛い」


不機嫌そうな初ちゃんの声が響く。


「初ちゃんっ?」


「ありえない。助けてやろうとしたのに、引っ張るなんて」
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