地の棺(完)
「一度お部屋に案内しますが、すぐに夕食の時間になると思います。
その時に、ここで暮らす皆と、顔を合わせることになるはずです」


夕食の時間が初顔合わせ。

緊張から、お腹がきゅっと痛んだ。

よほど変な顔をしていたのか、雪君がわたしの顔を見て吹き出す。


「す、すみません」


おとなしい子だと思っていたけど、笑い上戸なんだろうか。

照れ隠しがてら、雪君に気になっていたことを尋ねた。


「あの、ここって何人くらいの人が暮らしているんですか?」


雪君の家族以外にも、多恵さんみたいな家政婦さんや、部屋を借りて暮らしている人がいるみたいだし、人数の把握がしておきたかった。

できれば全員そろっているときに、色々聞きたい事がある。

もちろん、あまり個人的なことは聞くつもりはないけど。

雪君は、ちょっと考えるような顔をしたが、すぐに肩をすくめた。


「すみません。
実は、昨日から兄の友人も泊まりに来ているので、よく把握できていないんです。

夕食は屋敷にいるもの全員で食べるようになってますから、その時に皆に会えるかと。
それまでは部屋でゆっくり休んでいてください」


雪君の口から出た、兄という言葉に、先ほど出会った快さんを思い出す。

熟女好きな、軽薄そうなイメージの人だった。

たまたま来ている友達の中に姉の恋人がいるとは思えないが、人数が多くても目的は変わらない。
わたしは深呼吸をすると雪君の後に続き、屋敷へと入っていった。
< 13 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop