地の棺(完)
「……はぁ!?」


初ちゃんの素っ頓狂な声。

勢いよく体を突き飛ばされる。

両手に感じる土の感触。

体を起こし手をはたく。


「初ちゃん、痛いよ」


「馬鹿。お前、本当に馬鹿だね。普通、こんな時にそんなこと聞く?」


「いや、ちょっとでも初ちゃんの気持ちを楽にできたらいいなって」


「だからって椿の事聞いてきたの? ほんっっっと馬鹿!」


馬鹿馬鹿言われすぎて、さすがに自分の発言が場を読まないものだったと反省する。

初ちゃんの大きなため息が、自分の体の左側から聞こえた。


「せっかく人が色々情報を与えてあげようとしてたのに、蜜花って馬鹿だよね。なんで椿の事知りたいの?」


それは……


「椿さんって、姉さんと同じ時期にここで暮らし始めたんでしょう?
わたしの知らない姉さんの事、たくさん知ってるんじゃないかって。
もしかしたら、わたしに姉さんの手紙と鍵を送ってくれてのは椿さんじゃないか、そう思ったの。

でも椿さんは食事の時も、みんなが集まる時もいないし。
初ちゃんの彼女なら、椿さんのこと詳しいかなって、そう思っただけ」


考えをまとめていたわけじゃないから、頭の中の疑問をそのまま口にする。

初ちゃんは少し沈黙した後、再び大きなため息をついた。


「なるほどね。肝心なことは雪も話してなかったんだ」


「雪君?」


なんで今雪君の名前が?


「椿はね、自分の意志でここにいるだけ。正直、みんなからは疎まれてるんじゃない?
望まれた柚子とは真逆だよね」


疎まれて?

いや、それよりも気になったのは、姉は望まれてここにいた?
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