地の棺(完)
快さんはベッドには腰掛けず、すぐ横の壁にもたれかかる。

目を閉じた快さんの顔にも、疲労の色が濃くでていた。


「大丈夫、ですか?」


思わずそう尋ねると、快さんは目を開け、ふっと微笑む。


「ん。ちょっとだけ疲れたかな。
蜜花ちゃん、足、どう?」


「あ、はい。わたしは大丈夫です」


初君に比べれば。


そう言いそうになってやめる。

初君はわたしが引きずり込んだ。

あの時手を掴まなければ……


「初の事なら気にしなくていいよ」


快さんの言葉にドキッとした。

考えていたことが伝わった?


驚き、快さんを見ると、苦笑している。


「蜜花ちゃん、すぐ顔に出るよ?
初めて会った時も、俺のこと、変わった人だと思ってたでしょ?」


図星だった。


思わず両手で顔に触れる。

恥ずかしさから頬が熱かった。


「初はすっごく捻くれてるけど、根は単純な子でね。
最初から蜜花ちゃんの事、気に入ってるみたいだったから、本人もきっとなんとも思ってないはずだよ」


「そんな……」


「大丈夫だって。なんなら本人が起きた時に聞いてみてごらん?
毒吐くだろうけどさ。

真紀が死んだ時も、蜜花ちゃんのことが気になって部屋に行ったんだと思うし」


……そうだろうか。

好意的な態度だったとは到底思えないけど。

でも今ここで快さんにわたしの後悔を話したところで意味はない。

わたしは曖昧に頷くだけに留めた。


「初よりも……雪の方がなにを考えてるかよくわからない部分があるんだけどね」


ぽつりと言った快さんの言葉に驚く。

雪君が?

どちらかといえば初ちゃんはミステリアスで、雪君は素直な、そんなイメージだったけど。

快さんはふっと微笑み、首を傾げた。


「今の話は軽く聞き流してね。
それよりも、蜜花ちゃんに聞きたいことがあってさ」


「聞きたいことですか?」


なんだろう。

わたしに答えられることならいいけど。


「蜜花ちゃんがここに来た、本当の理由ってなに?」
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