地の棺(完)
「でも結局柚子は……死んでしまった。
土地神の怒りをかって」


土地神の怒り?

ここの人に話を聞いた時、必ずと言っていいほど出てくるその名前に、わたしはひっかかるものを感じた。


「椿さん。土地神ってなんなんですか?」


「加岐馬島に住む神様よ」


「それはわかります。聞きたいのはそんなことじゃありません。土地神と呼ばれるものの正体が知りたいんです」


強い口調で言ったせいか、椿さんの顔から笑顔が消える。

驚いたのか眼を見開き、わたしの顔をまじまじと見つめた。


「驚いた。意外と気が強いのね」


椿さんは少し考えた後、わたしのそばにずいっと身を寄せた。

ネックレスのチェーンに人差し指をかけ、鍵を取り出す。


「あ……」


後ろに身を引こうとしたが、その前に鍵を強く引っ張られてしまった。


「これがヒント。ただぶら下げてるだけじゃ、ここに来た意味はないわね」


なんで鍵の存在を椿さんが知ってるの?

わたしが鍵のことを話したのは、島に来た初日の自己紹介の時。

あの時、椿さんはいなかった。


「なんで鍵のことを……」


やっぱり手紙を送ってきたのは椿さんなの?

そう尋ねようとした時だった。

僅かに漂うミントの香りに気づく。

その直後、椿さんの顔が急に歪んだ。

いや、椿さんだけではない。

部屋自体が渦を描くように歪みはじめ……
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