地の棺(完)
立ち上がってみると、違和感はすごいが歩けないほどではない。
初ちゃんの手を固定するものがないか周囲を見回し、クローゼットの中にあった靴ベラに目をつける。
「ちょっと、それすっごく嫌なんだけど」
靴ベラを手にしたわたしを見た初ちゃんは、心底嫌そうに顔をしかめた。
「後はヘアブラシとか……」
「……それでいい」
初ちゃんの左手を固定するため、靴ベラをあてて包帯を巻いていると、
「どこにいたの?」
と初ちゃんが聞いてきた。
どこにいたのか。
崖の近くだったと思うけど、具体的には説明できない。
「山の中、だと思う」
「なんでそこに?」
「わからないの。初ちゃんが寝てる時に、椿さんと話してて……」
「椿と?」
初ちゃんの表情が険しくなり、胸がずきっと傷んだ。
「ごめんね。椿さんもいなくなったんだよね。わたしがあの時寝てしまわなければ……」
「だからって山の中に置き去りにされたら、普通目が覚めるだろ?」
強い口調の初ちゃんに何も言い返せず、俯いた。
すると初ちゃんは慌てて首を左右に振る。
「いや、違……責めてるんじゃないしっ!
薬かなんか使ったんじゃないかって、そう言いたいの」
薬?
「なんか気づいたことととかないわけ?
いつもと違う匂いがしたとか……」
言われて思い出した。
どういえばあの時、突然ミントの香りが部屋に広がって……
「ミント」
「え?」
「ミントの匂いがしたの。その後急に眠くなった気がする」
初ちゃんの手を固定するものがないか周囲を見回し、クローゼットの中にあった靴ベラに目をつける。
「ちょっと、それすっごく嫌なんだけど」
靴ベラを手にしたわたしを見た初ちゃんは、心底嫌そうに顔をしかめた。
「後はヘアブラシとか……」
「……それでいい」
初ちゃんの左手を固定するため、靴ベラをあてて包帯を巻いていると、
「どこにいたの?」
と初ちゃんが聞いてきた。
どこにいたのか。
崖の近くだったと思うけど、具体的には説明できない。
「山の中、だと思う」
「なんでそこに?」
「わからないの。初ちゃんが寝てる時に、椿さんと話してて……」
「椿と?」
初ちゃんの表情が険しくなり、胸がずきっと傷んだ。
「ごめんね。椿さんもいなくなったんだよね。わたしがあの時寝てしまわなければ……」
「だからって山の中に置き去りにされたら、普通目が覚めるだろ?」
強い口調の初ちゃんに何も言い返せず、俯いた。
すると初ちゃんは慌てて首を左右に振る。
「いや、違……責めてるんじゃないしっ!
薬かなんか使ったんじゃないかって、そう言いたいの」
薬?
「なんか気づいたことととかないわけ?
いつもと違う匂いがしたとか……」
言われて思い出した。
どういえばあの時、突然ミントの香りが部屋に広がって……
「ミント」
「え?」
「ミントの匂いがしたの。その後急に眠くなった気がする」