地の棺(完)
「ミント……」


初ちゃんが何か考え込むような顔になる。

椿さんを見つける手掛かりになるようなものが、他にないか……

記憶を辿っていると、首元で微かに揺れたものの存在に気付いた。


「鍵……」


「鍵?」


椿さんと最後に交わした会話は、この鍵のことだった。

この鍵が手掛かりになる、そういっていたんだ。

わたしは鍵を取り出し、初ちゃんに見せる。

初ちゃんは目を大きく見開き、困惑した顔でわたしを見た。


「これは?」


「姉さんの名前で送られてきた手紙の中に、これだけが入ってたの。
この島に来た日に、食事部屋でみんなに見せたんだけど、初ちゃんにはまだだったね。

わたしたちがあの大きな穴に落ちる前、飛行機のおもちゃがあったのを覚えてる?」


「ああ、あったな」


「あの飛行機にもこれとよく似た鍵がくくりつけられていたの。

椿さんはこの鍵がヒントになる、そう言ってたわ」


「鍵が、ヒント……」


初ちゃんは右手を口元にあて、宙を睨んだ。

その横顔を見ながら、切ない気持ちになる。


「役にたたなくてごめんね」


「……はぁ? なに謝ってんの」


「足、もう大丈夫だから、快さん達が来たら探しに行こう?」


これ以上誰にも死んで欲しくないから。

そういいかけた言葉を飲み込む。

初ちゃんは不機嫌そうな顔になり、大きくため息を吐いた。


「あのさ、お前勘違いして……」


初ちゃんがなにかいいかけた時、ドアをノックする音が聞こえて、わたし達は揃って顔をあげた。

互いの緊張が伝わる静寂を破り、


「蜜花ちゃん? 快だけど」


という、ドア越しに聞こえた快さんの声に安堵した。
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