地の棺(完)
「椿……さん?」
「それだけじゃねぇよ。よく見ろ」
シゲさんに背中を押され勢いよく前に出た。
恐る恐る、自らの懐中電灯を向けると、そこには着物姿で頭の髪の毛を桔梗さんみたいに刈りこまれた椿さんと、どす黒い顔色の真紀さん、そして顔だけ血まみれな亘一さんの体があった。
「!!!!!!」
声にならない悲鳴を上げる。
顎が外れるかと思うくらい大きく口を開き、耳を両手で押さえた。
無意識のうちにわかってるんだろう。
自分の声がうるさいって。
シゲさんは懐中電灯の光を自分の足元に戻すと、足のつま先で地面を蹴った。
「こんなところでよ、蝙蝠の餌にされてたんだ」
悔しそうな小さな声。
快さんは肩を震わせて俯いた。
「誰がこんな……」
快さんの呟きに、シゲさんは険しい顔になるとその胸倉を掴みあげる。
「お前だって見当がついてるんだろっ いい加減認めろよっ」
シゲさんは快さんを横に放り投げた。
すざっという音をたて、地面に崩れ落ちた快さんはそのまま項垂れる。
やがてゆっくりと持ちあがったその瞳は、涙に濡れてはいたけれどなにか決意したような強い意志を宿していた。
「……蜜花ちゃん。
初めて君に事故現場での話を聞いた時から、本当はそれが誰だか見当がついてたんだ」
「え……?」
「でもいうつもりはなかった。
なにも見つからなかったら君が諦めて帰ると、そう思ってたから。
情けないよ。俺は柚ちゃんが生きてる間も、死んでからも守れなかったんだから」
快さんはふらふらと立ち上がり、わたしの前に立った。
「蜜花ちゃんが見たっていう少年は、多分二人。
一人は叔父の亘一。
そして、もう一人は……雪だよ」
「それだけじゃねぇよ。よく見ろ」
シゲさんに背中を押され勢いよく前に出た。
恐る恐る、自らの懐中電灯を向けると、そこには着物姿で頭の髪の毛を桔梗さんみたいに刈りこまれた椿さんと、どす黒い顔色の真紀さん、そして顔だけ血まみれな亘一さんの体があった。
「!!!!!!」
声にならない悲鳴を上げる。
顎が外れるかと思うくらい大きく口を開き、耳を両手で押さえた。
無意識のうちにわかってるんだろう。
自分の声がうるさいって。
シゲさんは懐中電灯の光を自分の足元に戻すと、足のつま先で地面を蹴った。
「こんなところでよ、蝙蝠の餌にされてたんだ」
悔しそうな小さな声。
快さんは肩を震わせて俯いた。
「誰がこんな……」
快さんの呟きに、シゲさんは険しい顔になるとその胸倉を掴みあげる。
「お前だって見当がついてるんだろっ いい加減認めろよっ」
シゲさんは快さんを横に放り投げた。
すざっという音をたて、地面に崩れ落ちた快さんはそのまま項垂れる。
やがてゆっくりと持ちあがったその瞳は、涙に濡れてはいたけれどなにか決意したような強い意志を宿していた。
「……蜜花ちゃん。
初めて君に事故現場での話を聞いた時から、本当はそれが誰だか見当がついてたんだ」
「え……?」
「でもいうつもりはなかった。
なにも見つからなかったら君が諦めて帰ると、そう思ってたから。
情けないよ。俺は柚ちゃんが生きてる間も、死んでからも守れなかったんだから」
快さんはふらふらと立ち上がり、わたしの前に立った。
「蜜花ちゃんが見たっていう少年は、多分二人。
一人は叔父の亘一。
そして、もう一人は……雪だよ」