地の棺(完)
「ごめんなさいね。雪。
あなたの闇を私が全部抱えてあげるわ。

あなたに切られた髪と一緒に、こんな風習なくしてしまいましょう。

家族なくして栄える繁栄などない」


雪君は桔梗さんを見上げて、大きな涙をこぼした。

そしてその胸に抱かれ、口に鍵を加えた。

神原さんがわたしの前に立ち、頭を下げる。


「来た道を戻ってください。
多分、奥様は火をつけられたんだと思います。

なるべく早くここから離れて……」


そういうと神原さんはシゲさんを抱き上げ、快さんに渡した。

シゲさんをしっかりと抱きしめた快さんは、桔梗さんと雪君を見つめた後、そのまま横穴へと向かった。

横穴に戻っている途中、背後では蝙蝠たちの鳴き声と、そして木の爆ぜるような音が聞こえた。

何度も足を止めようとして、そのたびに初ちゃんに突き動かされた。

梯子を上ると四号室はまだ煙がなく、わたし達は一気に一階まで駆け降りた。

そしてそのまま屋敷を飛び出す。


いつの間にか空は薄暗くなり、木々の隙間から白い光が滲んで見えた。

なにが起こったのか状況を整理できずにいるわたし達の背後で、何かが崩れる音がして振り返る。

すると、洋館の後ろから黒い煙が立ち上り、屋敷が赤く燃え盛る炎の中焼け崩れていくところだった。
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