地の棺(完)
ほかの部屋はどうなんだろうか。

プレートの数字が気になったわたしは、部屋に戻ることをやめてそのまま階段の反対側にある部屋のプレートも確認することにした。

一番手前の部屋のプレートには『2』と書かれている。

その次はなにもなし。

そしてその隣には『1』が。

志摩家の人たちは皆一階に自室をもっているとのことなので、この四部屋には神原さん、シゲさん、真紀さんがいるということになる。

なにも書かれてない部屋が空き室ならば、先ほどの男性の声は神原さんかシゲさんの可能性が高い。

でもそう決めつけることもできない、か。

わたしの声に気づいて、すぐに階段を下りたのかもしれないし。

結局なんの収穫もなく部屋に戻ろうとしていると、外が白く光った。

また雷が落ちる。

そう予感したわたしは、カフェスペースの前で耳を抑えて立ち止まった。

あの音さえやりすごせれば、そう思い、身を固めじっとしていると、


「どうしたんですか?」


背後から声がかけられた。

振り向くと、階段を上がってきたばかりの雪君がいる。


「雪……」


名前を口にしようとした時、狙ったように雷鳴が響く。

思わず座り込んだわたしの前に、雪君が慌てて駆け寄った。


「大丈夫ですか?」


雪君はしゃがみこみ、わたしの顔を覗き込む。


「だ、大丈夫。
ごめんなさい。あの音がどうしても苦手で……」


しかし、言葉の途中で再び雷がおちた。

大きな音に耐えるため体を縮めると、耳を抑える手がほわっと温かくなる。

目を開けると、雪君がわたしの手に自分の手を重ねていた。
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