地の棺(完)
その時、初ちゃんの言いたいことがわかった気がした。

それはわたしに答えられることじゃない。

でも、なぜ今まで気が付かなかったのだろう?

気が動転していたとはいえ、確かに変だ。

混乱し狼狽えるわたしを見て、初ちゃんは満足そうに微笑んだ。

まさか、楽しんでる?


「……なにがおかしいの?」


「おかしい?

ああ、ごめんなさい。我慢していたつもりなんですが」


そう言うと初ちゃんは、体をくの字に曲げて笑い始めた。

ひーひー言いながら面白そうに。

呆然とするわたしに人差指を突き付け、涙まで流している。


「あああ、面白い!
本当に面白くなってきた」


「初……」


馬鹿笑いしていた初ちゃんは、急に動きを止めた。

突き付けた指はそのままに、わたしを見る目はぞっとするほど冷たい。


「ねえ。人の死体を見るの、久しぶりだったんですよね?

どうですか?
怖かった?」


凶器のような言葉。

初ちゃんのことが怖かった。

わたしは彼女から離れるため、ベットから立ち上がる。

しかし、それよりも速く初ちゃんに右手首を掴まれた。

振りほどこうとしたが、びくともしない。

そのままベッドの上に押し倒された。

この少女のどこにこんな力が?

抵抗しようと左手で初ちゃんの肩を押したが、僅かに着物の衿が乱れただけで、初ちゃんはいとも簡単にその左手を封じた。

両手をベッドに押し付けられ、両足は初ちゃんの体が乗っているため動かせない。

完全に組み敷かれていた。


「ああ、楽しい。

久しぶりだよ。
こんな気持ちは」
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