地の棺(完)
頷くわたしを見て、シゲさんはまた舌打ちした。
初ちゃんが言っていた言葉の意味も、やっとわかった気がする。
真紀さんが死んだ。
その結果にだけ意識が向いていて、原因は考えていなかったのである。
快さんは続ける。
「あ、勘違いしないでね。蜜花ちゃんがやったと思ってるわけじゃないよ。
君が雪と一緒にいたことは知ってるから」
耳に快さんの言葉は届いているのに、頭に残らない。
混乱、恐怖といったものに自分が支配されていく。
誰が?
誰が真紀さんを?
この屋敷の中にその犯人がいるというのだろうか?
まさか、いや、でも。
「……大丈夫?」
「あ……はい」
大丈夫なわけない。
誰かが真紀さんを殺した。
そのことはわたしの中に大きな波紋をおこした。
その波は大きな渦となり、疑心へと変貌していく。
「自殺とは考えられないんですか?」
この不安から逃れたくて、楽なほうへ思考を曲げようとした。
でも快さんは首を左右に振る。
「舌は根元に近い部分から切られていた。
自分で噛み切るのは不可能だよ」
「そんな……でも、刃物を使えば……」
「使ったとしても、それが原因で即死ということはないんじゃないかな。
時代劇とかでは舌を噛んで自害、みたいな展開があるけど、あれってショック死というよりは、舌を噛み切ったことによる出血死、窒息死が原因なんだよね。
もちろんショック死もないとは言えないだろうけど」
「即死じゃないとか?」
「即死じゃないなら、あの悲鳴の説明がつかないんだよ。蜜花ちゃんも聞こえたからあそこに行ったんじゃないのかな? 真紀ちゃんの叫び声が」
快さんは冷静に話す。
わたしにわかりやすいようにゆっくりと。
でもそれが逆に、わたしの恐怖心を煽った。
初ちゃんが言っていた言葉の意味も、やっとわかった気がする。
真紀さんが死んだ。
その結果にだけ意識が向いていて、原因は考えていなかったのである。
快さんは続ける。
「あ、勘違いしないでね。蜜花ちゃんがやったと思ってるわけじゃないよ。
君が雪と一緒にいたことは知ってるから」
耳に快さんの言葉は届いているのに、頭に残らない。
混乱、恐怖といったものに自分が支配されていく。
誰が?
誰が真紀さんを?
この屋敷の中にその犯人がいるというのだろうか?
まさか、いや、でも。
「……大丈夫?」
「あ……はい」
大丈夫なわけない。
誰かが真紀さんを殺した。
そのことはわたしの中に大きな波紋をおこした。
その波は大きな渦となり、疑心へと変貌していく。
「自殺とは考えられないんですか?」
この不安から逃れたくて、楽なほうへ思考を曲げようとした。
でも快さんは首を左右に振る。
「舌は根元に近い部分から切られていた。
自分で噛み切るのは不可能だよ」
「そんな……でも、刃物を使えば……」
「使ったとしても、それが原因で即死ということはないんじゃないかな。
時代劇とかでは舌を噛んで自害、みたいな展開があるけど、あれってショック死というよりは、舌を噛み切ったことによる出血死、窒息死が原因なんだよね。
もちろんショック死もないとは言えないだろうけど」
「即死じゃないとか?」
「即死じゃないなら、あの悲鳴の説明がつかないんだよ。蜜花ちゃんも聞こえたからあそこに行ったんじゃないのかな? 真紀ちゃんの叫び声が」
快さんは冷静に話す。
わたしにわかりやすいようにゆっくりと。
でもそれが逆に、わたしの恐怖心を煽った。