地の棺(完)
やめよう。

誰かが真紀さんを、と考えるのは。

それよりも、こんなことになってしまった以上早く外部と連絡をとれるようにしたほうがいいと思った。

もう姉さんの思い出探しどころじゃない。


「姉さん……」


心細さから胸元の鍵を右手でぎゅっと握りしめる。


姉さんなら、こういう時どうしたんだろう。

わたしは泣いて部屋に閉じこもってるだけ。

姉さんなら、もっと自分で考えて行動してただろうか。

姉さんなら……


その時、不意に思い出した。


なにかに怯えていた真紀さんの事を。

真紀さんはなにに怯えていたんだろう?

目を閉じ、記憶を巻き戻す。


カフェスペースで会話をしたあの時。

短い時間だったけど、真紀さんはいろんな話をしてくれた。

快さんに想いを寄せていること。

快さんに会うために、加岐馬島に来たこと。

でも、この島に長く滞在することは嫌なこと。

その理由は……






「人を喰う……化け物」
< 71 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop