地の棺(完)
「申し訳ありませんっ
三雲さんを……
旦那様を、見失ってしまいましたっ」
三雲さんを見失った?
驚き、神原さんの顔を見ると、神原さんは目をぎゅっと固くつむり、悔しそうに歯をくいしばっていた。
言葉の意味をいまいち理解できなくて周囲を見回す。
わたし以外の人は、先に話を聞いていたのか、たいして動じていないようだった。
とくに亘一さんは、欠伸をかみころしたような、ぼうっとした表情で興味なさそうにしている。
「……主人を、三雲を最後に見かけたのは?」
桔梗さんが静かに尋ねた。
再び顔を上げた神原さんは、今にも倒れそうなほど疲労の色が濃い。
「土砂を上っている時です」
土砂……その言葉で状況がつかめてきた。
神原さんは三雲さんと、土砂崩れの様子を見に行くといっていた。
そこで三雲さんがいなくなったのかも、と。
しかし、理解すると同時に、血の気が引いていく。
三雲さんがいなくなったということは、事故にあったということじゃないんだろうか?
それなのに、何故皆こんなに冷静でいられるのか……
わたしには信じられなかった。
「そう。じゃあ崖に落ちたのかもしれないわね」
淡々とした口調の桔梗さん。
大きなため息をつき、困ったわ、とつぶやいた。
その姿に
「困ったわ、じゃありませんっ」
と、物凄い形相の千代子さんが食いついた。
千代子さんは眉を吊り上げたまま、神原さんに近づく。
「あなたはなにをしていたんです? 探さなかったんですか?」
「さ、探しましたっ!
でも……土砂は思った以上に範囲が広く、しかも雨のせいで足場が悪くて……」
「それで? だから置いてきたんですか?
旦那様を!」
千代子さんは憤怒の表情で神原さんに迫る。
言い返すことができなくなった神原さんは、黙り込んでしまった。
三雲さんを……
旦那様を、見失ってしまいましたっ」
三雲さんを見失った?
驚き、神原さんの顔を見ると、神原さんは目をぎゅっと固くつむり、悔しそうに歯をくいしばっていた。
言葉の意味をいまいち理解できなくて周囲を見回す。
わたし以外の人は、先に話を聞いていたのか、たいして動じていないようだった。
とくに亘一さんは、欠伸をかみころしたような、ぼうっとした表情で興味なさそうにしている。
「……主人を、三雲を最後に見かけたのは?」
桔梗さんが静かに尋ねた。
再び顔を上げた神原さんは、今にも倒れそうなほど疲労の色が濃い。
「土砂を上っている時です」
土砂……その言葉で状況がつかめてきた。
神原さんは三雲さんと、土砂崩れの様子を見に行くといっていた。
そこで三雲さんがいなくなったのかも、と。
しかし、理解すると同時に、血の気が引いていく。
三雲さんがいなくなったということは、事故にあったということじゃないんだろうか?
それなのに、何故皆こんなに冷静でいられるのか……
わたしには信じられなかった。
「そう。じゃあ崖に落ちたのかもしれないわね」
淡々とした口調の桔梗さん。
大きなため息をつき、困ったわ、とつぶやいた。
その姿に
「困ったわ、じゃありませんっ」
と、物凄い形相の千代子さんが食いついた。
千代子さんは眉を吊り上げたまま、神原さんに近づく。
「あなたはなにをしていたんです? 探さなかったんですか?」
「さ、探しましたっ!
でも……土砂は思った以上に範囲が広く、しかも雨のせいで足場が悪くて……」
「それで? だから置いてきたんですか?
旦那様を!」
千代子さんは憤怒の表情で神原さんに迫る。
言い返すことができなくなった神原さんは、黙り込んでしまった。