地の棺(完)
知らなかった。

あの後そんなことをしていたなんて。


「その時はすでに土砂崩れは起きていて、三雲さんが村の青年団に連絡を取ろうとしました。

ですが、携帯が使用できなくて。

すぐに二人で屋敷に戻り、電話で掛け直すことにしました」


「くそっ、だからあんた等いなかったのか。

俺達に被害が広がらないようにしろっていって、あんな危ない場所に置いていきやがって」


シゲさんが悪態をつく。


「すみません。私の携帯も使えるか確認したかったので」


「先生、続けて」


快さんが真剣な表情で促した。


「はい。屋敷に戻ってすぐに、三雲さんはご自分の部屋で電話を掛けようとされたのですが、全く通じず……

家政婦の休憩室にある電話や、ここ、食事の部屋にある電話も試しましたが使用できませんでした」


「それでいつ出てくんだよ。犯人は」


「シゲちゃん、黙って」


「最初は……落雷で携帯や電話が使えなくなったのだと、三雲さんは考えました。

ここ加岐馬島は山や崖が多く、今でも電波塔のアンテナを利用しているためです。

そのため、三雲さんは非常用の無線を利用することにされました」


「無線? そんなものがあったの?」


桔梗さんが意外そうに聞き返すと、神原さんは首を縦に振る。

そしてそのまま、わたしを見た。

胸がきゅっと痛むほどの、悲哀に満ちた瞳で。

でもすぐに桔梗さんに視線を戻す。


今のは、一体……
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