地の棺(完)
「三雲さんも忘れていたそうです。
……気まぐれにつけた、と言われていたので。
無線機の存在は、私と三雲さんしか知りませんでした。
屋敷の裏にある倉庫においてあったのですが、それが……」
「壊されてた、か」
途中で言葉を切った神原さんの代わりに、快さんが言った。
「はい。その通りです」
この時、わたしは神原さんに疑問を感じていた。
無線機の存在を、三雲さんと神原さんしか知らなかったということもだけど。
それ以上に、神原さんの態度が気になった。
なにかを隠そうとして、肝心な話をしていない、そう見えたから。
神原さんの話が終わったと見るや、シゲさんは大きなため息をついた。
千代子さんも多恵さんも怯えた顔をしているが、志摩家の人々に動揺は見えない。
「それが理由って……弱ぇ。
全然納得できねぇわ」
シゲさんは立ち上がり、部屋から出て行こうとした。
「シゲちゃん」
快さんが声をかけると、ぴたっと足を止める。
振り向いたその顔には、溢れだしそうな怒りの感情に満ちていた。
「……俺にはな、誰が犯人だろうが、どうっでもいいんだよっ!
無線がなんだどうだも興味ねぇ。
快のかぁちゃんの母親の愛情とか糞みてぇなもん、欲しくもねぇしな。
はっきりしてんのは、この家の中に真紀を殺したやつがいる。
それだけだけだろっ」
そう言い放つと、シゲさんは勢いよく、自分が座っていた椅子を蹴り飛ばした。
激しい音をたて、椅子は部屋の隅まで吹っ飛ぶ。
それを見て多恵さんは小さな悲鳴を上げた。
そしてシゲさんは振り向きもせず、そのまま部屋を後にした。
……気まぐれにつけた、と言われていたので。
無線機の存在は、私と三雲さんしか知りませんでした。
屋敷の裏にある倉庫においてあったのですが、それが……」
「壊されてた、か」
途中で言葉を切った神原さんの代わりに、快さんが言った。
「はい。その通りです」
この時、わたしは神原さんに疑問を感じていた。
無線機の存在を、三雲さんと神原さんしか知らなかったということもだけど。
それ以上に、神原さんの態度が気になった。
なにかを隠そうとして、肝心な話をしていない、そう見えたから。
神原さんの話が終わったと見るや、シゲさんは大きなため息をついた。
千代子さんも多恵さんも怯えた顔をしているが、志摩家の人々に動揺は見えない。
「それが理由って……弱ぇ。
全然納得できねぇわ」
シゲさんは立ち上がり、部屋から出て行こうとした。
「シゲちゃん」
快さんが声をかけると、ぴたっと足を止める。
振り向いたその顔には、溢れだしそうな怒りの感情に満ちていた。
「……俺にはな、誰が犯人だろうが、どうっでもいいんだよっ!
無線がなんだどうだも興味ねぇ。
快のかぁちゃんの母親の愛情とか糞みてぇなもん、欲しくもねぇしな。
はっきりしてんのは、この家の中に真紀を殺したやつがいる。
それだけだけだろっ」
そう言い放つと、シゲさんは勢いよく、自分が座っていた椅子を蹴り飛ばした。
激しい音をたて、椅子は部屋の隅まで吹っ飛ぶ。
それを見て多恵さんは小さな悲鳴を上げた。
そしてシゲさんは振り向きもせず、そのまま部屋を後にした。