地の棺(完)
会いたくない。

でも……


「……少しだけなら」


渋る気持ちが顔に現れていたかもしれない。

今のわたしは自分の事にいっぱいで、人に気遣う余裕がなかったから。

細く開いた扉の先に、心配そうにわたしを見つめる雪君がいた。


「はい。少しだけ、お邪魔します」


雪君は白いクロスのかかった銀色のトレイを持ち、部屋に入ってきた。

それを右隅にある机の上に置き、クロスを取る。


「ホットサンドです。
蜜花さん、今朝から食事されてませんよね?

よかったら」


クロスの下には、白い皿があり、ハムや卵、トマトやレタスを挟んだホットサンドが四切れ並んでいた。

その横にはミネラルウォーターのペットボトルもある。


「あ、ありがとう」


タイミングよくお腹がぐぅと音をたて、雪君が微笑んだ。

顔から火が出るほど恥ずかしい。

落ち込んで、落ち込んで……

それでも体はちゃんとお腹がすくなんて。


「食べれるときに食べてください。

では……」


そう言って雪君は部屋を出て行こうとする。


「あ、あの!」


呼び止めて、はっとした。

そういえば快さんにあまり関わらないほうがいいといわれていたことを思い出したから。

でも、雪君は話があるといっていた。

ホットサンドを持ってきてくれただけ……じゃないと思う。


「はい?」


振り向いた雪君は首を傾げる。


「えっと、話って……なに?」


そう尋ねると、雪君の顔から笑みが消え、迷うような表情になった。
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