蘭子様の素敵な部活動。
タイトル未編集
第一章
3月、門出に相応しい美しい桜の花がヒラヒラと舞うここ美蘭華学園。
それは桜の花が舞うのとは違う、新しい風がこの学園に吹かれようとしてる予兆でもあった―――。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
見覚えのある場所、景色、そして目の前のなぜか柵越しの奴の顔。
「……おかえり蘭子」
門の内側の玄関までの小さな庭の中、ウォークマンを方耳にカウチの上であぐらをかく一人の男。
その状態で微動だにせず蘭子の返事を待っている一人の男。
奴だ…まさしく奴だ。
この物語の主人公、茅原蘭子(ちはららんこ)17才は今奴から目が放せない。
もうとっくの昔に慣れていたつもりだったのに離れている内に免疫が薄れてしまったのか何なのか、そんなことを蘭子が考えてる間に、奴は無言のままどーぞと言わんばかりに開いた門の横に立っていた。
「…ただいま」
相変わらず無愛想と言うか何なの…読めないその表情、と蘭子は感動の再会とは冗談でも言えないこの状況が不思議でならなかった。
目の前には奴、幼馴染みの蓮見薫(はすみかおる)17才、性別は言わずとも男。
今日から幼馴染みの薫の家族になんだかんだ世話になる。
「……もしかして出迎えのむもり?」
「…そう」
「「…………」」
そしてお互いボー然と見合うだけの、理解し難い沈黙が流れる。
「…やっぱもっかいニューヨーク戻ろうかな」
「…戻んの?」
「バカ、そんなわけないでしょ!」
「…相変わらず口悪いな、蘭子」
薫はフッと少しだけ笑って蘭子のトランクを持ち家の中に招いた。