素直になれない者同士の恋
私の意志とは裏腹に再び、夏生の唇が私のそれに近づいた。
殴ってやろうかとも思ったけど、オレに考えがある、と言った夏生の言葉を思い出してなんとか留まる。
夏生の吐息が唇にかかった瞬間、急にリアルに感じて目をぎゅっと瞑った。
このままじゃキスされる!
そう思ったとき、
「……っきだよ!」
突然のいずみの声と共に夏生と引きはがされ、
代わりにふわりとした温もりを感じた。
「え……ちょっ、いずみ!?」
「……オレだって沙南が好きだ。だから、夏生にはやらねぇ。」
私を抱きしめながら、夏生に目を向けて言う。
いずみの鼓動を直接感じて、私まで心拍数が上がってしまう。
顔も火照ってしまい、発熱でもしてしまったかのよう。
そして、私を包み込むいずみの腕が優しくて、温かくて泣きそうになった。