素直になれない者同士の恋
「でも、さすが夏生だよね。私たちのことよく分かってるっていうか。」
「そりゃあね、ダテに幼なじみやっていませんから。」
そう言いながら口の端を上げて得意げな表情を見せた。
「じゃあ、オレは先に帰るわ。あとは2人でお好きなように。」
そうドア付近に来て、振り返り様に言った。
「夏生、……ありがとう。」
「どーいたしまして。じゃあ、おやすみ沙南。あ、いずみあんまり遅くなるなよな、おばさんにも迷惑かかるから。」
「……分かってるよ。」
「おやすみ、夏生。」
私たちの返事を聞いて、夏生は私の作った義理チョコを片手に部屋を出た。
その瞳が深く沈んでいることに、私はとうとう気づかなかったのだけれど。
「……はあ、ほんとアイツに勝てる気がしねえな。」
閉じられたドアを見ながらいずみがらしくないことを言う。