素直になれない者同士の恋
「なんだよ夏生、邪魔すんなよ。」
弟に諭されるのが気に入らなかったのか、今度は夏生に突っかかるいずみ。
「いずみ、騒ぐとおばさんにも迷惑をかけるぞ。オレらは夕飯頂きに来ているんだから。」
それに乗ることなく受け流す夏生は、流石というか何というか。
その言葉にグッと詰まるいずみ。
どうやら、今日も夏生には勝てないようだ。
──まったくどっちが兄なんだか。
「んだよ…、ほんっと沙南も夏生もムカつく。おばさん、ごちそうさま。オレ、帰ります。」
「あ、ちょっと待っていずみくん……」
お母さんが言うのも聞かずに、ご飯をかき込むようにして食べ、リビングを出て行ってしまった。
静寂を取り戻した食卓で、夏生が躊躇う素振りを見せながらお母さんに謝った。