素直になれない者同士の恋
「………。」
心なしか夏生の眉がピクリと動いた気がした。
何も言わない夏生を不思議に思いつつ、私は言葉を続ける。
「ほら、私といずみっていつもケンカばかりじゃん? 私も、いずみに素直になれなくてつい衝突しちゃうんだけど今日はバレンタインでしょ? だから、この機会にさ……」
「つまりは、いずみが好きってこと?」
私の言葉を遮るようにして、夏生が言った。
私がコクリと頷くと、夏生の顔が陰った。
それに気づかない私は話が早いと思い、さらに言葉を重ねた。
「だから弟である夏生に協力してほしく……って、きゃあ!」
最後まで言い終えないうちに視界が反転する。
何が起きたのかと見上げるとそこには夏生の顔、下にはベッドの心地よい柔らかさ、スプリングの軋む音。
そこで初めて夏生に押し倒されたということに気が付いた。