素直になれない者同士の恋








「オレだって沙南が好き。だから、いずみなんかに渡したくない。」


何の前触れもなく、放たれた言葉。

サラサラの黒髪がこぼれ落ちている夏生を凝視した。


思考停止。



「………。」


「沙南?」



「えええええええーっ!?」



私の声に驚いたように夏生は手の力を緩めた。

その瞬間にパッとベッドから起き上がる。



「ちょっと、おばさんに聞こえるから。」



ドアの方をちょっと焦ったようにして見ているけど、今の私はそれどころではない。



「夏生が私を好きっ!?えー嘘でしょ!」



思わず頬をつねった。


痛い……、つまり現実?



しかし、あの冷静沈着な夏生から出る言葉とは到底思えない。



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