あの人は俺たちの兄だった。
「今日はまだましだなぁ」
「ましって・・・これでも十分ひどいよ。梓兄、生傷だらけじゃん」
「ハハッ、まぁ毎日殴られたらな」
消毒してくれるそこが沁みる
でも痛みを感じるのは生きてる証拠だ
まだ葎を守れる証だから。
だから俺はいつだって耐えられる
葎がいなかったら俺は今頃この世にはいなかったかもな
「葎、これからもあいつには逆らうな?俺が殴られてる間も極力下を向いて目を合わせるな。いいな?」
「うん・・・」
それが俺たち兄弟が生き延びるすべなんだ
無難に、一番被害の少なくてすむ生き方