あの人は俺たちの兄だった。

“やめろっ、あいつに手を出すな!”


誰だ、誰が叫んでいる?


“た、すけて・・・助けてお兄ちゃん!”


あれは・・・俺?

お兄ちゃん?

誰のことだ?


「・・・さ、あ・・・さ、梓!」

「んっ、臣さ・・・ん?」

「大丈夫?梓兄・・・」

「あ、あぁ。少し懐かしい夢を見ただけだよ」


あれはまだ俺が小さかった頃の記憶

血の繋がった父親の方に引き取られた兄

兄さんはいつでも俺たちを義父から守ってくれた

なのに・・・兄さんは突然姿を見せなくなった

幼い俺には分からなかったが今なら分かる

おそらく顔も覚えていない父さんが関わっているのだろうことが


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