あの人は俺たちの兄だった。

「臣兄は兄のこと知ってるの?」

「知ってるよ、でも口止めされてるから話せない。今はあいつを信じてあげてくれ。
ごめんな、葎」

「臣兄が謝ることじゃないよ。でも・・・あってみたいな、もう一人の兄に。
そうだ、臣兄!臣兄の知ってる兄ってどんな感じの人?」


葎は目をキラキラさせながらそう聞いた

少し困ったように臣さんは口を開いた


「そうだな、あいつは一言でいえばブラコンだな。会えばいつでも弟が弟がって口開いて、誰にでも自慢して回ってるよ。
そして馬鹿みたいに必死に頑張って働いて、責任感強くて、誰もが憧れて強いやつって思われてるけど・・・俺から見ればあいつは弱い普通のやつだよ」


そういった臣さんの顔が少し陰ってどこか遠くを見るようだった

俺にはそれがあの時の、サヨナラって言った兄さんと重なって見えた

そんなはずはないのに、俺はいつでもこの人と兄さんの影を重ねてしまって

臣さんが兄さんだったらいいなとかっていつも思うんだ
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